第4章 恋人 - 定義と認識 1*
「ふう………まだ全て受け入れるのは辛いだろう。 強請ってくれるのは嬉しいが」
優しく言葉を落とし、体内から静が出ていった。
体を離され、ホッとした安堵。 それからなんとも言えない喪失感が体を包む。
「………」
ちょっと怖かったけど、何だかんだいってもやっぱり優しい………?
顔の向きを変え、ベッドの端に座る彼の後ろ姿を見詰める。
ふいと振り向いた静と目が合った。
「………朝から着衣のままのセックスとは、ふしだらし過ぎやしないか」
キッとこちらを睨んでくる静が分からない。
「キミが俺を煽るからだ」
「え、あの」
散々煽ってたのは静さん、と言おうとするも聞き入られそうにない。
今度はふう、とため息をつき片手で顔を覆っている。
「この情動の、なんという喜ばし…いや。 勿体ない………そうだ。 せっかく、キミの中で果てられた初の…これは勿体ないとしか言いようがないな」
「あの………もしもし、静さん」
そして手を外した静がじっとこちらを見、ふ、と柔らかく表情を崩す。
「透子」
そんな顔で改めて名前を呼ばれ、ドキリと胸が鳴る。
「案ずるな。 夜も明日の朝もある。 きちんと恋人同士らしく愛し合うことにしよう」
「え。 でも私、帰りますが」
そしてそんなものは案じてませんが。 そう言うのは面倒そうなので止めておいた。
「心配はいらない。 あの咲希とやらには予め泊まりと言ってある」
「………」
無言の透子を抱き寄せた静が「そろそろランチにしようか」と言い、「ああ、そうだ」と何かを思いついたように言葉を続ける。
「なんなら部屋に持ってこさせて、今からでも仕切り直しを。 俺は続けて出来るからこれも心配しないでいい。 俺のモノを咥えながら食事をするキミはさぞかし」
つつつつ…と背中に指を沿わされる────と、その瞬間、バチン!!
派手な音が部屋に響いた。