第4章 恋人 - 定義と認識 1*
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それから青木と静に家の手伝いの人たちを紹介され、案内されるままに目黒邸を散策した。
きらびやかな国立と比べれば、こちらはどちらかというと機能的、という印象を持った。
二階からは「昼食の支度をして参ります」と青木が別れた。
「下には会議室まであるんですね」
「元々仕事用に建てたから。 私室などは二階と三階に。 ここの奥に来客用のゲストルームが三つ」
「私はこのお部屋を使わせていただけるんですか?」
部屋らしきドアノブに手をかけた静がじっと見下ろしてくる。
「何を言ってる。 俺と同じ部屋に決まってるだろう」
「へ? で、でも」
「仕事などは俺は手前を使ってるが、キミはどうする。 寝室を隔ててもう一部屋あるから」
ドアを開け、あとから足を踏み入れると、どうやら内部でも区分けがされているようだった。
これだけでもちょっとしたマンション並だとは思うものの。
視界の端に映っている寝室がどうも気になる。
「別の………部屋自体を分けていていただければ有難いんですが」
視線を逸らし遠慮がちに口に出した透子に、静が訊いてくる。
「キミは俺のなんだね?」
「なに、とは」
「俺に告白してきただろう」
言いながら、静が後ろから両腕を回してきた。
ゆるくお腹の前で手を組んで密着してくる彼に動揺が隠せない。
「だ、だからって。 そんなにベッタリする必要は」
「俺が好きか」