第4章 恋人 - 定義と認識 1*
………それからはなんというか。
言いそびれてるうちに事が進んでしまったというか。 つい余計なことを思い出し、ぽっと顔を赤らめた。
沙希はそんな透子を怪訝そうに見ていたが、また思い出したように口を開いた。
「とにかく。 うちを馬鹿にしたことに変わりはないわ。 あんたなんか………もらわれっ子の癖に!!」
すい、と静が二人の間に割って入る。
両眉を寄せ、非難がましい顔を咲希に向けた。
「おい女、いい加減にしたまえ。 よくよく蓋を開けてみたら、お互い様ってことだろう?────義姉の白井沙希」
彼女を見下ろす静が意地悪そうに口の端をあげる。
「………っ!」
咲希がカッと顔を赤くする。
なにか言い返そうと口を開きかけ、それを無視して顔を逸らした静が、透子の背中に手を添えた。
「またご主人へ挨拶をしに週中に伺う。 透子、来なさい」
「は、い。 咲希さん行ってきます」
静を睨んでいる咲希をチラチラ気にしつつ、彼のあとに車に乗った。