第4章 恋人 - 定義と認識 1*
ピッタリ約束の時間にチャイムが鳴り、二人が顔を見合わせた。
「わ、迎えよね。 服はこれ。 クリーニングして返してよね! とりあえず待っててもらうから!!」
バタバタ部屋を出て行った咲希が階段を降りていく。
今朝は義母が出掛けてることを思い出した。
そういえば、静は挨拶に来る話はどうするんだろう?
彼からは心配しなくていい、なんて言われたけど。 考え込みながら自室にあったバッグを手に持ち、早足で玄関に向かった。
「静さん、お待たせしました」
「四分遅い」
………またムスッてしてる。
でも今朝の彼はいつもと何かが違う。
いつも通りキラキラだけど、と。
自分の少し前では沙希が後ろ向きに、静と向かい合って立っている。
今まで二人でなにか話をしていたようだ。
それにしては沙希から不穏な空気が発されているのを感じ取り、彼女の肩に手をかけようとした。
「沙希さん………?」
声をかけた途端、咲希が透子の手をバシッと振り払う。
沙希の怒りがこもった表情に口をつぐむ。
「今まであたしを騙してたのね、あんたも! あんな見合い写真なんて嘘っぱちじゃないの! 当日に八神さんだって分かってたなら、なんで言わなかったの!?」
………静さん、サラッとバラしちゃったんだ。
それでなんでと言われても。 一瞬考え、静と会った初日の出来事を思い出した。
「それは、沙希さんの身を案じて。 ゴブリンさん(仮)の方がずっとマシだと思っていたからです」
「は?」
「そ、そこまでか」
静がショックを受けたように口に手をあてて俯く。