第4章 恋人 - 定義と認識 1*
****
そんなこんなで迎えた土曜。
昨晩も夜中まで勉強していたせいだ。
朝に目覚めると、静との約束の時間までは僅かだった。
「透子ちゃん、準備大丈夫?」
「うっ、うん。 いえ!」
コンコン、とノックされ咲希がドアの隙間から顔を出してきた。
わたわた慌てて支度中の、透子の部屋に散乱する服やバッグ。
それらを見渡した咲希が呆れて腰に両手をあてる。
「お呼ばれなんでしょう? 昨晩でもママに言っといてくれれば………ちょっと。 そんなスーパーで売ってるようなペラペラの服で行くつもり?」
着ていたのはまさにスーパーで買った服だったので、びっくりして咲希を見詰めた。
ハア、とため息をついた咲希が透子の手を引き、廊下の奥へとずんずん歩く。
「さ、咲希さん、私急いでるのだけど」
「急いでるんなら来てちょうだい。 ホラ、ここ座って」
咲希の部屋に入ったのは初めてだった。
丸い鏡台が備え付けられたドレッサーの前に座らせられ、戸惑った表情を沙希に向けた。
「髪セットするからネイルしてて。 これ速乾性だから。 なに塗り方知らないの? 最初にファイルあてて」
「本棚ですか」
「文具じゃないわよ!」
そんな風に怒られながらも、咲希のレクチャーの元になんとか身支度を整えていく。
女子力、という単語が頭に浮かんだ。
「髪は少し、巻いてく?」
「いえ、もう時間が無いので」
「ちょっとぐらい待ったって、野暮ったい女を連れて歩くよりはマシでしょ」
相変わらずハッキリものを言う。
それでも咲希の発言はいつも間違いとは言い切れない。