第4章 恋人 - 定義と認識 1*
結局、義母の心は変わらなかった。
あの人が機嫌よさげに接してくれると、自分も許されるような気がしていた。
そんなことを思うたび、あの時の静の言葉が頭に浮かぶ。
────お前は一体誰なんだ?
それは置いても、動き出してしまったものは仕様がない。
とりあえずは眼前の問題を解決しよう。 透子が自室のベッドに座わり、ほうと息を吐いた。
「家に挨拶、かあ………」
どうするのがいいんだろう。
またゴブリンさん(仮)に頼む、とか。
それは失礼なような………少し考え込み、ひとまず静に連絡することにした。
今さっき静と会ったばかり、というか。
なんだか『イケナイコト』をした後の気分だ。
実際にそうなんだけど。 あんな車の中で、あんな格好で………手のひらの裏で頬を包み、火照りを冷ましていると間もなく静が電話に出た。
「どうした?」
スマホの向こうの彼の声にドキッとし、
先程の義母たちとのやり取りを伝える。
「それは俺も考えていた。 そういえば………まだあの時の答えを訊いてなかったな。 キミは白井の家と今後どう付き合っていきたいんだね」
答え?
そんなことを訊かれただろうか、と首を捻る。
「北陸に居たときも学生で一人暮らしするのに保証人になってくれて………色々お世話になったので、出来ればご迷惑は掛けたくないと思ってます」
「ご迷惑、ね。 それだけなのか?」
「え………? はい」