第4章 恋人 - 定義と認識 1*
「それは………おいおいと。 それで、来月から会社の寮に入ることになると思います」
これについては帰り際、静に言われたからだ。
『キミの家には一時的にしろ、俺の家に住むことは伏せておいて欲しい。 西条には社員寮に入ると話をつけておくから』
正式にお付き合いしてる訳ではないし。と彼に同意した。
お茶菓子のおせんべいをパリ、と指で割った沙希が透子に理解を示す。
「へえ………そっか。 ここから丸の内だと確かに。 バスから駅に乗り継いで、往復四時間はかかるもんね」
「そしたらその前に八神様がご挨拶に来られるのよね?」
目を合わせて二人が頷き合う。
「それが筋よね。 実質透子ちゃんを預けることになるんだし」
「ではその件は静さんに話してみます」
そう断り腰をあげた。
「コネ、かあ。 大人しそうに見えて上手くやったわね。 羨まし」
そんな会話を背中で聞きながら、自室へ戻る階段に足をかける。
義母が一瞬声をひそめた。
「そりゃ、元は白井の恩恵に預かろうとアッサリこの家に養女に入った子だもの。 姉さんたちも災難よねえ………あんな目にあってお墓まで放っておかれるなんて」
「ママのそれ、ホントなの? ま、あたしには関係ないし。 あーあ、あたしも就活してみたいな」
「咲希ちゃんはお父さんの会社を継ぐんだから、ちゃんとしたお婿さんを探さないと。 お嫁なら八神様ぐらいに、余程格上のお家じゃなきゃ駄目よ」
「ハイハーイ」