第4章 恋人 - 定義と認識 1*
静と別れて夜に家に着いた透子は、義母たちがいるダイニングに顔を出した。
就職先が決まったことなどを話すためだった。
「透子さん、どうしたの? 改まって」
室内を見回すと、義父はまだ仕事のようだ。
義父は従姉の咲希よりも更に疎遠なので、それは構わないだろう。
コーヒーを手にした咲希も興味深げにテーブルの席につく。
「まあ、あんな大企業の!?」
「昨日の今日で? 普通、採用通知送ってくるもんじゃないの?」
思ったとおりの反応の二人だった。
透子があらかじめ準備していた報告を続ける。
「八神さんが口添えしてくれたんです。 咲希さんも助けてくれてありがとうございました」
「そんなのいいわよ」と咲希がヒラヒラ片手を振ってくる。
ここの所、咲希は協力的だった。
義母を説き伏せてくれ、都会の地理に疎い自分に色々と教えてくれていた。
「事務かなにかでしょ? それでもラッキーよね。 あんなとこ高卒じゃ無理だから」
「それにしてもねえ、今からお嫁にいくのに。 八神様とのお話は進んでるの?」
「だからママは古いのよ。 八神さんが誰かに透子ちゃんを紹介したとするでしょ。 今どき家事手伝いですなんて、恥ずかしいわ」
そんな咲希の考え方はさすが院生というか、と思うも、次の発言はごく普通の女性らしくもある。
「腰掛けで在籍して結婚、しばらくして子供が出来たら辞めれば済む話。 そうよね? 余裕はあるんだし」