第3章 自立(と調教)への一歩は王子から*
西条と別れ際にまた握手を交わし、再び車に乗った。
「ディナーに行こう。 希望はあるかね」
「ご飯、ですか」
足を組んだ静が体を前に傾け、こちらの顔を覗いてくる。
「………機嫌が良さそうだ。 いつものトゲトゲしさが無い。 職が見付かったからか?」
「えっ、あ。 本当にありがとうございました。 いえ、それもありますけど」
「なんだ、言ってみるがいい」
「静さん、お友達がいらっしゃるんですね」
「………は?」
しかも西条さんは素敵な人だったし。
必要が無い、なんて素っ気ないこと言ってた癖に。
知らずと顔が綻んでしまう。
「自分でもよく分かりませんけど嬉しくて。 あと、私にトゲがないのなら、それは静さんのせいです」
「…………」
「本当は静さんは」
「止めろ」
じっと透子を見ていた静が頭をさげ片手で抱え出す。
「へ?」
「それ以上かわいいと犯しそうだ。 ほんのりトゲがある塩梅で頼む」
「………わ、分かりました」
実は全然分かんないけど怖い。
ほんのりトゲってどんな状態なんだろう。
「それから、西条は別に友人じゃない。 俺は自分の身が可愛いからな」