第3章 自立(と調教)への一歩は王子から*
「だからここに来た。 中途扱いのOJTから育ててやってくれ。 俺の名前は出さないように」
「きみがそう言うんなら。 白井さん、履歴書とかの書類はここに送ってといてくれる? 条件やなんかはその後のやり取りで。 ええと。 丁度月初の再来週からは来れるかな」
二人の慌ただしいやり取りに目が回る。
手渡された名刺に目を滑らせ頷いた。
「は、はい」
「しかし随分と大事にするんだねえ? どういう関係?」
「どうということはない。 ただ言っとくがセクハラなんかあれば俺が個人的に潰すからな」
「ふふ……怖い怖い。 静、せっかくだから親父に会ってってよ」
フムと頷いた静がエレベーターホールへと視線を向ける。
「分かった。 透子、そこに掛けて少し待っててくれ」
「はい」
ソファに促され、西条と隣り合って腰をかけた。
往く社員らしき人が西条に会釈をしていき、どうやらこの人も偉い立場の人なのだと思った。
「良いんでしょうか。 突然見ず知らずの私がこんな立派な所で働かせていただけるなんて」
「静は見る目はあるから。 自分の会社と切り離して俺に頼んだのは彼なりの配慮だよ。 腰掛けで勤まる仕事じゃないからね」