第3章 自立(と調教)への一歩は王子から*
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それから静が運転の人に行き先を告げ、車で五分ほど走り、着いたのは丸の内の商社ビルの前だった。
門の社札を見ると普通に名前の通った会社だということが分かる。
敷地内に行き交う人を見ている横で、静が通話をしていた。
「ああ、西条。 以前に人を探してると言ってただろう? いや、そっちじゃなく海外向けの。 降りてきてくれ」
「ここは静さんのお知り合いの会社ですか?」
「そうだな。 ロビーに行こう」
静が車を降り、そのあとに続いた。
ややあって、長めの黒髪を後ろに流した、これはまた静とは違うタイプのラテン系イケメンが両手を広げて二人の方へと歩いてくる。
「やあ、静。 相変わらずきみは麗しいな。 こちらが?」
相乗効果の眩しさに目をしばたたかせ、頭を下げた。
「は、初めまして。 白井透子です」
視界の中に大きな手のひらが見えたので、それを取るとブンブン手を振り握手をしてくる。
「初めまして。 俺は西条誠。 静とは同学で、今は取引先の関係でもある。 でも、ふうん……随分と若そうだけど……これなら秘書課の方が向いてるんじゃないか?」
「フッ……透子はかわいいからな」
得意げに目を閉じ顎に手をやる静に、西条がやや困惑して返答をする。
「ま、まあそうだね。 確かに男女の別や年功序列とは無縁の部署だけど、うちの社風は能力主義だから」