第18章 死がふたりを分かつとも
静は始終優しく笑っていた。
スラリとした体に白のタキシードを着こなし、金の髪を揺らした彼のさまは神話に出てくる神様のように神々しかった。
透子はチラチラとそんな彼を盗み見ては頬を染めた。
彼の左手の薬指にはその瞳を映したようなトパーズの結婚指輪が光っている。
これは透子が静に贈ったものだ。
「────死がふたりを分かつまで、愛し慈しみ」
牧師の説教の途中で静がすっと手をあげた。
「悪いがそこは訂正したまえ。 『死がふたりを分かつとも』 。 さ、もう一度最初から」
パン、と手を叩いて仕切り始めた静に牧師が当惑する。
聖書訂正すんな。 透子が静に肘を食らわした。
口元に拳をあてて笑いを堪えていた牧師が再び言葉を繰り返した。
手に持っているブーケを見下ろした透子が、幸せを噛み締めながら静に小さな声で訊いた。
「………静さん。 いつかロッジで交わした約束は覚えてます?」
「ああ────しかしこれでキミと俺は永遠だな?」
誓いのキスの合図も待たずに二人が口付けを交わす。
湖面にそよぐ風の音に混ざり、半ばヤケ気味の牧師の声が教会に高らかに響いていた。
『────病めるときも健やかなるときも、死がふたりを分かつとも────……』