第18章 死がふたりを分かつとも
chapter.5 結婚 ────
静と透子は正式に婚姻を結んでおらず、事実婚というものだ。
自分の名前を変えたくないと言う透子に静が了承した。
「構わない。 この国も早く夫婦別姓が認められるようにならないものかな。 ただ俺は、キミのウエディングドレス姿は見てみたい────そしてその姿を知るのは俺だけでいい」
そんなわけで、二人っきりで海外にある山合いある小さな教会で式をあげた。
低い草原の丘陵がいくつも連なり
みずみずしさをあらわす緑の模様をつくる。
遠くには尾根に雪をたたえた山々がのぞめた。
傍にある広い湖はただ真っ白な雲と濃い青空以外の何をも映す気はないようだった。
ピンクや赤の穂状になった花々が、教会の前にある周りをぐるりと囲む。
まるで童話の世界のようだ。
『今後も白井の名字を名乗れるのなら、まあ?』
最初はしぶしぶとそれに応じたが、いざそんな場所に立ち、静が自ら選んだ純白のドレスを身に付けた透子は浮き立った。
透子を見るたび静は「天使のように綺麗だ」と甘い言葉を何度も落とした。
決して派手ではなく、胸の下で切り替えのある清楚なドレスは透子に似合っていた。
だが透子が嬉しがったのはそれだけが理由ではなく。