第18章 死がふたりを分かつとも
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今年も京吾への報告が終わり、透子と静は木陰に入り皆と子供らが戯れる様子を眺めていた。
午後の陽射しは段々とやわらいで、二人の立っている周囲には大小の木漏れ日が降り注いでいる。
はしゃぎ過ぎる三田村の子に、透子と静の長女がたしなめているさまがみえた。
誰に似たのか反面教師かは分からないが、しっかりして常識的な子である。
それに視線を投げていた静がむっつりした表情で自分の頬を撫でた。
「殴ることはないだろう………でもなあ、透子?」
「三田村さんにやられるよりはマシでしょう。 何ですか」
ツンと横を向いたままの透子の顔を静がひょいと覗き込む。
「そろそろ三人目はどうかね? キミの取締役の仕事も青木や佐々木を始め、周りの人間のお陰で随分と楽になったし」
「一人目はおろか、二人目も計画してないうちから仕込んどいて今回は殊勝ですこと」
とはいえ、意外というか静は子供が好きらしい。
今年三歳になる二人目においては透子よりもよく世話をしていたぐらいだ。
「ム………嫌だったのか? 今の生活が幸福ではないと? それとも何なら俺との」
「ああもう! そんな訳ないでしょう。 いい加減、そのイジケ癖何とかなりませんか。 やかましいです!」
こんなやり取りもすっかりと慣れた。
しかしそこは敵もさるもの。 引き出した言葉を良いふうに解釈し、更なるご褒美を強請ってくる。
「ではその証に俺の姫からのキスを所望する」
静の甘い声でそう言われれば、透子としても乗らざるを得ない。
「も、もう。 分かりましたよ────愛しています、王子様」