第18章 死がふたりを分かつとも
「わたくしに務まるかどうか………ですが弟にも熱心に説得されまして」
目黒邸に呼んだ青木兄。
リビングには家の一同が集まっていた。
長椅子に座りふんぞり返って話す静だったが、もう少し他人にものを頼む態度が取れないものか。
こんな所も彼に『足りない』部分である。
まだまだ社会的常識に乏しい自分も人のことは言えない。 自覚はあるので透子は黙っていた。
「俺たちは今目黒にいる。 父親の思い出のために国立にこもる役目はもう無いはずだ。 優秀な脳をボケさせるにはまだまだ早い」
「本当はわたくしは………どんな形でも、八神家の………今は静様に、仕えさせていただけるの…なら」
その場ではらはらと涙をこぼした国立の青木であった。
目黒邸の全員────桜木と美和はもらい泣き、透子と三田村と青木弟は穏やかに微笑み合い、心からもう一人の青木を歓迎した。
立場的に、青木と透子が名目的に取締役ではあるが、ほぼほぼの会社は青木を上の序列とした。
近く出産や育児を控えた透子のたっての希望だった。
しかし各社副取締役や重役に彼を紹介するにあたり、紆余曲折がなかったわけでもない。
「あ、きみ。 お茶のお代りを」
「かしこまりました」
持ち上げたティーカップの柄をつまみひと口運んだ人物が静の方へと目を向ける。
「ウム………美味い。 それで、八神会長。 呼ばれて参りましたがもう一人の取締役とは」