第18章 死がふたりを分かつとも
chapter.4 もう一人の取締役と透子の出産 ────
しかし京吾の葬儀も落ち着き、49日にもならないうちに静が………キレた。
「新人会長に新人社長しかも妊婦、ここのところ休みなどちっとも取れん! アホか、やってられるか!!」
明け方近くにやっと帰宅した彼だった。
仕事にストイックな静が珍しい。
と、透子が起き抜けの目をまん丸にして静を見詰めた。
「で、でも。 八神さんのためにも頑張らなきゃ………」
静を支えなければならない。
それからもう一つ。 今透子を突き動かしているのはそれだった。
京吾のことを思えば、身重の中での変わらず過酷な生活も全く苦ではなかった。
「解っている。 だがどれだけキミとの時間を過ごしていない。 俺の子を身ごもっているキミを俺は全く労れていない。 俺たちには優先順位があるだろう!」
それでも静にとっては少しばかり違うらしい。
彼の気持ちは有難くはあるが同時に気に触らないでもない。
「優先順位ですか。 ま、分かってらっしゃるなら良いですけど。 優先順位という言葉の意味を?」
透子が平静を装ってそう言うと静が一瞬ぐっと黙った。