第18章 死がふたりを分かつとも
ちなみにあの後、逃亡を図った犯人らがどうなったのかというと。
奇跡的に人質側の死者がゼロ。 そんな結果もあり警察当局は執拗に彼らを追うことはしなかった────にもかかわらず、事件より一週間後。
ほぼ無傷で帰国した桜木があでやかに微笑んでみせた。
『ふふっ、ちゃあんとお金も取り戻して参りましてよ。 警察機関とは別のルートを使ったのです。 過剰防衛などと問題になると困りますし………けれど三田村さんは全治二ヶ月ですわ。 そうそう、静様の腕を切った者には特に念入りに。 四肢を細かに折ってだるまさんにして差し上げました』
透子はそれ以上桜木に深くは聞かないことにした。
京吾の言うとおり、桜木とは情が深いのだろう。
身内には限りなく優しく時には厳しく、
そして敵には徹底的に容赦なく。
現在も、目黒邸で唯一未婚の彼女だが、そんな桜木を射止める男性が果たして現れるのだろうか。
そんなことを何となく静に話してみると、
「ふう………桜木はなあ。 パッと見はしとやかだが、あれの本質はほぼ男だからな」
困ったように頭を搔く静に、透子は首を捻った。
何にしろ、終わり良ければ全て良し。 そんな結末だった。