第18章 死がふたりを分かつとも
chapter.2 静と西条 ────
二人の活躍は長い間、かなりの武勇伝として各国のメディアや世界の女性を騒がせた。
彼らの勇気ある行動と若さと地位、何よりそのビジュアルを世間が放っておくはずもなく。
取材などの機会が無かった訳でもないが、当然静がそれを嫌がった。
たまたま透子と彼らが二人でいる所をテレビ番組のカメラが追っていた。
「あの時の状況を詳しく聞かせてください!」記者にマイクを向けられた西条が苦笑して、だが得意げに肩を逸らしてみせた。
「まあねえ。 オレは静の命を救ったわけだし?」
前を向いたまま歩を緩めない静に記者が執拗についてきた。
「フン………そもそもあれは貴様が三田村似のCAにちょっかいかけようとして、向こうに目を付けられたのだろう。 最初にその女と貴様を庇ったのは俺」
「で、でも、乗客に医者がいて良かったよねえ。 静が大立ち回りしてる間に腕を保管してくれて」
西条が慌てた様子で言葉を被せた。
三田村に聞かれるのを恐れたのだろうか。
「医者を見つけ出して引っ張ってきてくれたのには感謝をしている。 しかし俺より暴れたのは実質、お前の方だ。 ただ俺は、貴様が簡単に引き金を引ける男だとは思ってなかったがな」
「フーン? 逆にオレは静がそうじゃないとは思わなかったんだけどね。 死んだ方が世のためって人間は、それこそ星の数ほどいるのに」
あの時に犯人を撃った拳銃は、彼らから奪ったものとされている。
が、実は西条は普段からそういうものを身に付けるのには慣れているらしい。
もちろん口外は出来ない。