第18章 死がふたりを分かつとも
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chapter1. 十年前の事件 ────
現地では静に対して、すぐに腕の縫合と肩に受けていた銃弾などの手術が行われた。
功を奏してそれは成功したものの、脈や繊細な神経を繋いだおかげで少しの振動でも避ける必要があったために帰国が遅れた。
意識が戻った静が現地と日本とを通信した動画で、開口一番透子に言った。
嫌味ったらしく口の端をあげて。
『────また俺の勝ちだろう?』
『微妙ですね。 こっちは大変だったんですから。 寝てるだけならこうやって仕事はしてもらいます』
『フ…なぜ向こうを向いてる? そういえばセックスの時以外、あまりキミは泣かないな。 そういえば、あの最初の』
と、顔をあげた透子を見た静が琥珀の瞳を曇らせ両の眉を寄せた。
『………済まなかった』
頭や胸に包帯を巻かれ、
水平に機械で固定された腕と胴。
そんな彼が痛々しかった。
『…っう……はい…っ…』
『まだキミを抱きしめられないが………もうそんな顔はさせないと約束するから』
きっと今も辛いんだろう。
だが静はそんなものは表に出さず自分を気遣ってくれる。
『…っ……は…はい……』
『キミが呼びかけてくれた声はたしかに受け取った。 俺は改めてキミに感謝と敬意を表する』
『…………そん…なもの、は』
それでも静が生きているのなら。
彼が無事で戻ってきてくれるなら。
また会える────今まで堪えていた透子の緊張がやっと解けた瞬間だった。