第18章 死がふたりを分かつとも
あらためて透子がエマに並び京吾の墓の前に座った。
煤けた墓標の端を指で拭う。
場所のせいもあるが彼の墓前を見舞う者は少ないようだった。
「────八神さん。 今は幸せですか」
透子が語りかけて目を閉じた。
今まで自分の身に降りかかったさまざまな出来事は心の中にファイリングして閉まっている────何かの拍子にそれを開けることはある。
ただここに来ると木々の間、垣間見える水平線のように、たしかに存在している遠い思い出のいくつもの断片が透子の脳裏に次々と浮かぶ。
年々増えていくばかりの物語を今年も透子は鎮魂歌として彼へと捧げる。
京吾の死を含め、あの事件からこれまでにあった出来事の記憶を辿っていく────。