第18章 死がふたりを分かつとも
「アタシが望んだからだね。 本人も了承してくれたし。 この人を最期に看取れて良かった」
「それでも数奇な話ですわね。 ハイジャックの事件から半年後に会長がお倒れになられたなんて。 ですが会長のお陰で静様が………あら」
物思わしげに息をつく桜木の声が途切れ、彼女の視線の先を透子が追った。
大小の、やたらとキラキラした一団が墓地の入り口に広がる並木道を歩いていた。
「あ、静さーん! 遅いです」
透子が両手を頭の上で振り、早く来るようにと急かした。
透子、三田村、エマの三人の子供を伴った静がこちらに向かっている。
初夏という季節柄もあり、まるで風に揺れる新緑のごとく清々しい静の魅力はそのまま絵画のように周りの景色に溶け込んでいた。
温暖な気温のせいか肘までまくった長い腕に子供らが戯れていた。
「ん…だから。 さっきから説明しているだろう。 俺は父親が嫌いだった訳じゃない。 お陰で俺やお前がいるのだし」
その辺りの観光へと子供らを連れ出していた静が苦笑した。
「特に次男は良い働きをしてくれた。 乳の吸い付きが良かったせいか、ようやく透子の乳首を存分に」
近付いてくるにつれ聞こえてくるその内容に苦々しく顔を見合わせる透子と三田村だった。
「子供たちに向かってさっきから何の説明をしてやがるのです?」
透子の非難がましい大きな声に一旦静が口を閉じるも、まだ小さな三田村の次女が興味津々という表情でエマの息子と静を交互に見る。
「静おじさん、存分になあに?」
エマの息子はもう中学生なのもあり顔を赤くして目を逸らしていた。
訊き返され機嫌を良くしたのか静が性懲りもなく話を続ける。
「ふむ………存分に感度があがった上にこう、フィニッシュは指で両方刺激しながらだな」
うふふ、と笑みをこぼす桜木に三田村がため息をつき静を睨んだ。