第18章 死がふたりを分かつとも
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午後三時ピッタリに社内放送が鳴り、三人がいた社長室の空気が張り詰める。
透子は手を止めてじっと耳を澄ませた。
「────業務時間中に失礼する。 わたしは取締役会長八神京吾だ。 この放送は現在、八神各社各国へと伝えられている。 社員全員、今がた受信したメールに記載のURLにアクセスしなさい」
低く悠然とした京吾の声だった。
佐々木と美和が透子の後ろに周り、PCを見詰めた。
リンク先を辿るとその動画は昔、他人事のように観ていたものと似た、海外での報道の様子だった。
『本日、日本時間午前三時45分。 日本航空46便、カタールから日本行きの飛行機がハイジャックされました────……』
そんな冒頭から記者が話し始める。
頭がうまく回らないのか、透子は要所要所の言葉を拾うのが精一杯だった。
『ここの乗客の中には八神グループ取締役、八神静さん。 作家の………などが搭乗していことが分かっており、14時12分、人質は無事釈放されました。 八神静さん他数名が重体として現地病院に搬送中です。 犯人の行方については────この後乗客名簿による他の日本人については────』
「えっ……あ、あれっ!?」
美和が素っ頓狂な声をあげた。
何ごとかと透子が訊くよりも早く。
「とりあえずワタシ、搬送先の病院に連絡してきマス!!」
大声を出した美和が社長室を駆け出して行った。
そのすぐ後に再び社内放送が続く。