第18章 死がふたりを分かつとも
「佐々木さんは、八神会長か静さんから頼まれた方でしょう? 万一何かあれば私のサポートをするようにと? あの件はまだニュースにはなっていませんから…今がその万一です。 ただ、これまでも色々とありがとうございました」
透子がそう言うと。
ほう、なにか諦めたように息をついた佐々木は「いいえ」と返事をしてから少し笑った。
それから彼が少しばかり表情を引き締める。
「……────事件の様子は都度聞かれますか?」
「いえ。 そんな事をしていたら仕事になりません」
頷きを返した佐々木がいつものどちらかというとのんびりしていた口調を改めた。
「では。 それについては私も会長と…青木さんからの指示に従います。 今方、社長に来ているもので緊急性の高いものについてはご説明します。 私も全てを熟知している訳ではありませんが」
そして手持ちのバッグの中からノートPCを取り出し、サッとそれに目を通した。
そんな佐々木の様子を見て透子が思った。
静は周りに人間を置いていなかったし、こんなやり方はおそらく────八神会長の方だ。
いっそ笑えるぐらい、あの人にはつくづく頭が下がる。
「お願いします」
そう言って透子が大きく息を吸い、気を引き締めた。