第18章 死がふたりを分かつとも
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会社に着いて早々、美和は足りない医療具があると言い、受付に医務室の場所を問い合わせてから来るのとのことだった。
社長室に足を踏み入れるとなぜか佐々木がデスクの脇に立っていた。
「あれ、佐々木さん? おはようございます」
そわそわして落ち着きがないというか。
何と声を掛けていいか分からないといった彼の様子だった。
「白井様………おはようございます。 あ、あの…社長のことは、この度は大変に」
コートを脱いで備え付けのクローゼットに掛け、その間に透子が考えをめぐらせた。
「静さんのメールボックスに受信が溜まりまくってます。 昨日少し目を通しましたが、緊急のものがあるみたいでした。 まずはそれらから片付けたいのですが、助けていただけますか?」
佐々木が戸惑ったように口を開く。
「は、でも。 わ、私はただの………」
思えば少しばかり違和感があった。
佐々木はいつもきちんとした身なりをしているし、言葉遣いも丁寧だった────まるで誰かの元に就いている人間であるかのように。