第18章 死がふたりを分かつとも
そんな透子を美和が心配げに見あげる。
「もしもここに命があるなら、静さんとなら、弱い子ではないはずです。 それから、一つ訊いていいですか? 静さんは腕を切られたのと言ってました。 接合手術などで元に戻ることは出来ますか」
透子を見詰めていた美和が前方斜めの車窓に視線を逃がした。
「………ほぼ、不可能デス。 難しい術式なのは置いておいテモ、切断された腕を直ぐに消毒し冷却、これも速やかに処置をした患部と………一刻も早く手術を行わなけレバ」
「そう………ですか」
透子が暗い声を落とした。
あの状況でそれは有り得ないだろうと美和も分かっているようだ。
失ったのが両方か片方かは分からない。 ただ無事に戻ってきても静に障害が残るのは確実だということ。
「桜木さんや三田村さんなどのSPにも、もちろん緊急救命に対する、ある程度の知識はありマス。 逆にワタシなどでは危険が伴うので、ダカラいつも静様は出張の際にはSPを帯同させていまシタ」
身勝手で偉そうな癖に、彼はいつも他人のことばかり考える。
なぜ今回に限って一人で行ったんだろう。
それなのに飛行機の中で無茶をし向こうの怒りを買った。
「分かりました。 少しだけ仮眠を取ります………」
ようやく空が白んできた頃だった。
冷たそうで、鉛のような色だった。
道路は荷物を積んだトラックだけではなく、通勤の車のために混んでおりラッシュの時間帯へ入ろうとしていた。
「ご賢明デス。 ごく軽い鎮静剤を打ちマス」
薄らと意識が遠くなり、だが透子のまぶたの裏には静の姿が焼き付いて離れなかった。