第18章 死がふたりを分かつとも
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車に乗った透子が座席のシートに頭をもたせかけた。
吐いたせいで胸やけがするし、頭痛も。
目をギュッと閉じて深呼吸をするとようやく少しはましになった気がした。
「透子様。 昨晩から何も摂ってナイと青木様から聞きまシタ。 車内で点滴をシマしょう。 腹痛を?」
簡易的なスタンドを座席に固定していた美和が、腹部を抑えていた透子に目をとめた。
「え? いえ。 ありがとうございます」
「────ちょっとお体を診せてくだサイ」
透子の顔を見た彼女が訝しげに眉を寄せ、透子の首の辺りや胃、腹部を調べはじめた。
「美和さん? 私、ただの睡眠不足の他は特にどこも」
「………お休みはどうしてもできまセンか」
一通りの触診などを終え、目に真剣さをたたえて懇願してくる美和の意図が分からなかった。
「………?」
「おそらくデスが、妊娠してらっしゃいマス。 昨年の目黒邸での一件かもしれまセンが………今は一番不安定な時期デス。 ワタシから皆に説明しマスから」
透子の両手を力強く美和が握ってくる。
美和の言葉に驚くも、透子はすぐに水平に首を振った。
「………心配していただいてありがとうございます。 でも、いいえ。 休めません」
体の跡が消えたと思ったら。
しつこくこんなものを残していった静をなぜだか可笑しくさえ感じた。