第18章 死がふたりを分かつとも
青い顔でダイニングに入ってきた美和が透子に椅子を勧めてきた。
中央のテーブルに置かれたPCから、ノイズとも風の音ともつかない酷い雑音が室内に響く。
「航空中ですし、静様のリングの情報からはこれらの音声が精一杯でした。 つい二十分前の出来事です」
雑音が引いていき、人の気配をその向こうに感じた。
『互いに……大切なものがあるのは…理解しているつもりだ。 ハッキリと、要求を言いたまえ……』
静の声だが、途切れ途切れだ。
音声のせいかと思うも、次に聴こえてきた聞き覚えのない男性の話は流暢だった。
『日本人の八神静。 若くして天才的な実業家と呼ばれている。 これはこれは大層な拾い物だったな────だが死もいとわない俺たちを前にして、そいつと暴れたのは賢くない。 お陰で同胞が半分に減ってしまった』
『フン……賛辞が、稚拙だな? 経済界の…至宝だ。 その俺の………腕を、切り落としただけでは……足りないと』
ドン!……ドン!!
直後、二度の、今まで聞いたことの無い重い爆発音が透子の耳を刺した。
「────────……!!!」
途中でストンと椅子の上に腰を落とすも透子から全身の力が抜けた。
「透子様!」
三田村が支えてくれようとしたが、透子がそれを避けて床に顔をつけた。
急に嘔吐感に襲われたからだ。
「………う…ぐっ…」
音声はもう聞こえてこなかった。
胃の中のものを出し切ってしまった透子に美和がタオルを持ってきてくれた。
それでも非現実的過ぎる出来事に血の気が引き、震えが止まらなかった。
腕? と、あれは銃声………?
頭を殴られたみたいに目が回る。