第18章 死がふたりを分かつとも
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そうして迎えた最終日の七日目だった。
午前六時。
外は厚く暗い雲に覆われまだ重苦しい静けさに包まれていた。
昨晩はほぼ徹夜だったとはいえ、静に会えるのが楽しみで寝付けなかったのが本音だ。
仕事はいくつか静への確認事項のみ残して無事に片付けた。
少しぐらいは褒めてくれるだろうか。
そしてまた新しい業務を任せてもらえるだろうか。
そんなことを思いながら久しぶりに目黒邸でゆっくり目の朝食を堪能していた透子の元に、血相を変えた桜木がダイニングに駆け込んできた。
「た、大変です!! 静様が……! 静様が!!」
「桜木さん………?」
わっと戸口の床に低く伏せた桜木の様子に、透子もただ事ではないと立ち上がった。
「ど、どうしたんですか。 桜木さん、説明して下さい」
「すみません、僭越ながら私から」
桜木の後から硬い表情であらわれたのは三田村だった。
「帰国途中の静様の飛行機が、二時間十分前に中東の組織を名乗る者にハイジャックされました。 今頃はようやく日本の政府関係者に伝わっている頃です。 そして、その様子を………今」
淡々とした動作だが、ノートPCを操作していた三田村の声が最後に先細りになって消えていく。
「申し訳ございません!! いつも通りに出張に同行しようとしたのです。 ですが静様は、透子様を見守ってくれと聞かなくて、それでも!!」
「桜木さん。 お、落ち着いて………あ、あのそれで」
反射的にこの場を抑えようとするも、透子の声がつっかえた。
ハイジャックって………何それ?
膝がふらつきそうになるし、心臓は息が止まってしまいそうに早鐘を打った。