第18章 死がふたりを分かつとも
「いえいえ。 先日私、白井様が社長の唯一の秘書であることを耳にしました。 社員の人達も白井様のことを気にしているみたいですよ。 機会のある時にでもお言葉をかけてみてはどうでしょうか」
「はあ………」
そう言われるも。
お言葉、とは?
首を捻った透子がはっと気付いた。
今までひたすら社長室にこもっていたが、ここの会社の人達とちっとも挨拶を交わしていなかった現実に。
そんなわけで。
透子は翌日の始業時間から一階を回り始めた。
戸口に立ち大きな声で挨拶をした。
「皆さん初めまして、白井透子です。 おはようございます!」
「あっ…お、おはよう…ございます!?」
フロア内にいためいめいがガタガタガタと立ち上がり面食らったようにそれを返す。
「失礼しました!」
お辞儀をして満足しきった表情の透子が次のフロアへと回る。
すべて回ったら次の階へと。
その陰で、壁に隠れた佐々木がハラハラとしてそんな透子の様子を見ていた。 選挙でもあるまいし違うそうじゃない。 そう言いたいのをぐっと堪えていたのかどうかは………分からない。