第18章 死がふたりを分かつとも
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五日目にして透子に与えられていた仕事にようやく目処がつこうとしていた。
「白井様。 良ければ今晩もお夜食をお持ちしますが」
そう言ってデスクにかじりついていた透子に声を掛けてきた人物。
ビル管理の責任者でここに常駐しているのだと聞いている。
毎晩『お疲れ様です』と声を掛けてくれる守衛の人から聞いたのかもしれない。 透子の事情を察してくれているのか、何かと気にかけてくれた。
彼がデリで買ってきてくれるものも暖かく消化の良いものが多かった。
「佐々木さん。 すみません」
お礼を言ってビニール袋を受け取った透子が中のカップスープで手を温めた。
すっきりとした印象の顔を透子に向け、逆に謙遜を返してくる。
「とんでもありません。 白井様はまるで社長のようですね。 いつも誰よりも遅い時間まで社にいたのを存じてます。 とても仕事熱心な………」
三十代ぐらいだろうか。 とても気づかいのある人だ。
ビル内の空調は就業時間に合わせて一括管理されているらしい。
二日目の夜に、佐々木が申し訳なさそうに社長室に電気ストーブを運んで来てくれた。
「私は静さんの不在の間手伝っているだけなので。 「様」なんて止めてください」
いつもここでは一人っきりだったため、こうして話し相手になってくれる佐々木の存在は気分転換になった。