第3章 自立(と調教)への一歩は王子から*
「こないだもたしか綺麗だと褒めましたが」
「見た目は慣れているから。 心配するな、ちゃんとあれは録音してある」
録音? なぜに。
「い、今もですか」
「当たり前だ。 あの日のキミのベッドの声も」
「いやあああああっ!!」
勢い静に飛びついて口を塞ごうとすると彼が体を反らして避ける。
「………いきなり叫ぶな道の往来で。 非常識だぞ」
「ひ、非常識とは………?」
窘める口調の静が透子の顔を見、怯えたように後ずさる。
「そ、そう怖い顔をするな。 かわいい顔が台無しだろう」
「かわ……」
先ほど赤くなった直後顔が青くなり、また赤くなった。
そんな彼女に笑みをもらした静が手を取る。
「さて………気を取り直してそれでは行こうか」
「どこへですか?」
「キミの野暮用に付き合ってもいい。 ただしそのあとディナーとこないだの続きに付き合いたまえ」
「え、それは嫌です。 特に最後の怪しい方」
「また攫われたくなければつべこべ言わず車に乗れ」
「…………」
何となく分かってきたけど、この人って言ったらきかない性格だと思う。
先の予定も無くなったことだし、ちょっと体も冷えていたところだったけれども。