第3章 自立(と調教)への一歩は王子から*
「面接…キミが仕事を? ………今見てるそこか?」
腰を折った静が、スマホに映っている会社概要のページを覗き込む。
「あ、そうです」
「止めておいた方がいい。 良い評判は聞かない。 もって今期一杯だ………よくある話。 破産寸前で社員を抱えた挙句トンズラする類いの」
「………そう、なんですか?」
噂が広まりやすい田舎ではあり得ないことだ。
都会って怖い、とスマホを閉じた。
「探さずともキミなら大概は出来るだろう? 俺に言ってくれればいくらでも」
「え、いや。 そういうのはちょっと」
「なぜ?」
「こういうのは自分で探さないと意味がないというか……」
「………キミは俺を侮辱したいのか」
「へ? そんなつもりは」
「親の跡を継いでる俺も似たようなものだろう」
「あ。 私と静さんとは。 そんなつもりは無くって………すみません。 静さんは立派だと思います」
「立派?」
「学生を早くに終えてすぐに大きな会社で働いてらっしゃるんでしょう? そんな人は私の周りにいません」
「………」
「………え?」
ふいと顔を横に背け、そして仏頂面の癖に心無しか静の頬が赤い。
「………照れてるんですか?」
「キミからそんな風に褒められたのは初めてだ」