第17章 I love you と言わない*
だが選んでいる時も京吾が「それは地味すぎやしないか」「安っぽくないか。 いや実際、安すぎやしないか………素材はなんだシルクか」などと口を出してくる。
「もう、落ち着いて選ばせて下さいよ。 大体年代も違うんですから!」
透子がキツめに主張すると「む………」と一歩引いた京吾が黙った。
「うん、選びました!」それから京吾に報告しに行き、頷いた彼が店員に声をかけた。
「きみ。 これと同じものをもう一セット貰えないか。 美しく包んでくれ。 もう片方はここの紙袋でいいから」
いい物を、と言われたのでなるべく値札は見ないように選んだが「二万六千円です」と店員が伝えてきて透子が引いた。
何なら地元での一ヶ月の食費に匹敵する。
そして会計を終えた京吾がぺいっとデパートのロゴの紙袋の方を透子に寄越してきた。
透子が恐る恐るそれを受け取った。
「あ、ありがとうございます。 ですがあまり無駄遣いはどうかと思いますよ?」
「きみはわたしを誰だと思っている」
呆れたように京吾が言ってきて、もう一つの綺麗にラッピングされた方を高級そうな紙袋を手に持っているのを透子がじっと見詰めた。
それから京吾を見、また紙袋に視線を戻す。
「エマさんへのプレゼントですか?」
「………さっさと昼飯に向かうぞ」
透子を無視して京吾がスタスタと前を歩き出した。
八神京吾。 ちょっと姑息だが可愛い人だ。