• テキストサイズ

琥珀王子と瑠璃色灰かぶり姫

第17章 I love you と言わない*



彼の後ろ歩き出すと京吾が声をかけてきた。

「気が削がれたのなら戻ってもいいのだぞ」

少し歩を速めて前を向いたままの、彼の冷ややかな印象の顔を見る。

「いいえ」

「そうか。 ではもう一件付き合いたまえ」そう言い、彼が入っていったのは有名デパートだった。
有名デパート………の、婦人コーナー?

「あの辺か」

などと呟く京吾について行く。

「服装は以前より少しはマシだが、あんな安っぽいハンカチなど身に付けるものではない。 人とはちょっとした事でお里が知れるというものだ」

「はあ………スミマセン」

余計なお世話な説教を食らいながら連れられた先は、有名ブランドなどがずらりと並んだハンカチ売り場だった。

「ここからなるべくいい物を十枚選べ」そう言った京吾が両手を杖において石像のようなポーズで立った。

「いえ、そんな………あ、もしかして。 さっきのを気にしてくれてるのですか?」

透子が訊くと京吾がふいと横を向いた。

「これは業務命令だ。 いいか、きっかり十枚。 わたしの目は誤魔化せられんからな」

そんな事を睨みながら言ってくる。 業務命令って、一体なんなんだろうこの人は。 仕方がないので透子がハンカチを吟味し始めた。



/ 457ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp