第17章 I love you と言わない*
報告してくる西条の顔はユルユルである。
「でも、手を繋いだだけですか?」
「それも静の影響だなあ。 そういうんじゃなくってさ。 手順を踏んで気持ちを確かめてさ、触れ合っていくのが真っ当な恋愛じゃないかな? でもさ、山梨のあんな田舎だと、静なんて青姦とかしたりして」
ハハハッと笑う西条に透子があからさまに赤面した。
「円花ちゃんはとっても繊細な子だから。 こう、今の大きな」
「いたっ」
狭い車内で西条が両腕を広げたので透子の肩に当たった。
「あ、ゴメン。 大きな『Like』が、寄り添っていく心とともに『Love』になっていくって過程。 それを大事にすべきだよね」
ユルユルな西条がうっとりとした表情で語り続けた。
「はあ」
若干ウザいという気がしないでもない。
たがそう言われてみると。
静と………自分たちにはそんな過程はあったのだろうか、透子は改めて考えた────静には西条の発言などどう言っても一蹴されそうだが。