第16章 大人の遊戯*
「キミにはまだ無理だろう。 俺が乗せてあげるから……待て、透子」
左から足をかけて、と。 透子が静がやっていたとおりに鞍に乗ったがソフィーは大人しいようだ。
何事もなくちょんと鞍の上に収まった透子が目線の高さに驚きそれからにっこりと満足そうに笑った。
それを見ていた静が呆れたようにふうと息をついた。
「全く…そのままじっとしてなさい。 今手綱を」
「手綱? これですか」
透子がクイと馬の口からぶら下がっていた紐を引く。 すると、ソフィーが嫌がるように前脚を浮かせ急に後ろへ大きく仰け反った。
反動で一緒に透子の体も後ろに倒れかかり「きゃっ!!」と悲鳴をあげた。
「危ない!」────静の声が聞こえ、あまり衝撃がないのを認めた透子がそおっと目を開けると、静を下敷きにして地べたに落ちていた。
「あ、す…すみません!!」受け止めてくれたのだろう静に謝り慌てて起き上がった。
そのあとに肘をつき上体を浮かせた静が一瞬顔をしかめた。
「痛…ふう…初心者が無茶をするな………しかし今朝から今日のキミはどうにも変だな。 俺に妙な対抗心を燃やしてきたりいつもにも増して気を使ったりと」
彼がじっと透子の顔を見てくる。
「別にいつも通りですよ」
ふいと視線を外すも静が疑わしげに口を開いた。
「そんなはずはない、それぐらいは分かる。 何か思うことがあるなら言いたまえ」