第16章 大人の遊戯*
障子とガラス戸が上下に別れた仕切りの向こうには長細い廊下があり、そこから庭を眺めることが出来た。
敷石と岩、小さな池のある庭は派手ではないし手を加えすぎてもいない。
色のあるものといえば椿の花ぐらいだがそれが一層紅の艶やかさを引き立てていた。
「庭も………年月が風情を拵える。 侘とはこういうものをいうのかな。 うちにはない趣だ」
同じく外を眺めていた親日家(?)らしい静のコメントである。
透子が思うに、静は時々過剰に日本人らしく振舞うフシがある。
今までの生活や外見がそうさせるのだろうと想像しているが、やはり普通の人からみるとどこか違和感があるのだろう。
石黒もそんな静を不思議そうに見てきた。
「あはっ、八神さん随分日本語が達者ですよね。 日本には出稼ぎに来てるとか」
「出稼ぎに来るほどこの国は豊かではない」
「んーそれは、サラリーマンとかの話ですよね。 けど、オレの家はそんなの関係無いというか。 不景気ほど客が増えるってね。 法人法って知りません?」
そう言う石黒から視線を外し静が控えているお嫁さんの方に目をやる。
「………細君は随分とお若いのだな」
「ん、細君ってコレのこと? 18なりたての嫁ですよ。 オレみたいな家じゃ仕様が無いけど、女房は若い方がいいとか何とか。 デブだしパッと見、冴えなくっても」
石黒が笑い声をあげながらパーン! と音を立ててお嫁さんのお尻を叩き、彼女が驚いて悲鳴をあげる。
「きゃっ…!!」
お嫁さんが真っ赤になって俯いた。