第16章 大人の遊戯*
石黒はシャープな顔付きながら、表情豊かではある。
「イイよイイよ遠慮しなくって! 今どこ住み? へえ東京、キツくない? あーでも、白井さんならその方がいいかもね。 ホラ地元だと噂もあるし、ねえ?」
だが透子は彼の表裏のある性格が昔から好きになれなかったのだ。
「………」
静は中学当時の自分のことを全ては知らないはずだが────本当はどうなんだろう。 チラと彼を見るも、いつもよりも無表情の静からは読み取れなかった。
「………どうぞ」
お茶とお菓子を目の前に置いてくれた石黒の嫁とやらは随分と若く初々しくみえた。
ここは神社境内の奥まった家屋。
通されたのはいかにも和風建築といった趣の広間で、古くはあるが懐かしい日本の風情を感じさせる。
畳に広い座卓といい、田舎の友人の家を思い出した。
「ありがとうございます。 結婚おめでとう。 いいお家だね」
「………美味い茶だな」
正座をし背を伸ばした静が湯呑みを一口運び息をつく。
お嫁さんを後ろにして、並んだ静と透子の向かい側に座っていた石黒が話しかけてきた。
「こんなの古いばっかだけどねえ。 ところでそっちに知り合いいる? 白井さん、去年の同窓会に来なかったよね。 北田とかも結婚したらしいよ」
「そうだったんだ。 私がここに帰ってきたのは昨年だから、バタバタしててちょっと」
正確にいうと、同窓会には行きづらかったのが本音だ。
曖昧な答えを返した透子が外に目を移す。