第3章 自立(と調教)への一歩は王子から*
家に帰ってお風呂をいただき、廊下で従姉の咲希とばったり鉢合わせた。
歳が近いとはいえ、昔から咲希の応対はどこか冷ややかだった。
そのせいで普段からあまり会話をしないが、その晩は咲希の方から話しかけてきた。
「今日は随分遅くまでおうちデートだったとか。 八神さんは優しい?」
「………はい、とても」
少なくとも今日の彼は。
心なしか顔が赤いのに気付かれないといいんだけど。
ドキドキしながら答える透子に沙紀が怪訝な表情を返した。
「透子ちゃんって趣味が変わってるよね。 いつも家に籠りっきりだし………八神さんみたいな家の人と付き合うんなら、もう少し外へ出たら?」
女子大の院生である沙紀は透子と違い華やかなタイプで、夜はよく出掛けているようだ。
部屋に戻り、ふと顔をあげて呟いた。
「ん? ああ………そっか」
これは使えるかもしれない。