第3章 自立(と調教)への一歩は王子から*
財力と地位。
美貌に脳みそ。
それだけなにもかも持ってるなら彼のあの態度も普通なのかもしれない。
態度────……
『透子。 大丈夫だから』
突如、ベッドの中での出来事が脳内再生された。
顔が一気に火照り、生々しい記憶を頭の上で両手で振り回し、バババッとモザイクでかき消す。
「透子様、迎えが参りました」青木の声に我に返り慌てて玄関口へと向かう。
青木も外に出て、車に乗った透子に丁寧にお辞儀をして見送ってくれた。
「またのお越しをお持ちしております。 今度はごゆっくりとお食事でも」
そう言ってきた青木に曖昧な表情を返した。
「ありがとうございます。 少し都心から離れていそうですが、静さんはいつもこのお屋敷に住んでるんですか?」
「都内の別宅と半々ですね。 静様はこの国立の家には滅多に人を呼びません」
車が動き出したので、青木に向かって片手をあげて頭をさげた。
ということは、ここが本宅ということ?
それにしてはご家族が住んでいる様子がなかったと思い返した。
「………私には関係ないか」
前を向いた透子がポツリと呟く。