第16章 大人の遊戯*
境内に差し掛かった時だった。
透子を見たなり神主姿の男性が声をかけてきた。
「ん…? ええっと。 白井さん!? オレだよオレ! 中学ん時に同級生だった石黒!」
「ああ、覚えてます…久しぶり」
やはり外れクジだ、と透子が心の中で呟いた。
石黒克也────小学校の途中から一緒だった彼は外見も成績もいい方だった。
元野球部で明るい性格も周りから人気があった。
透子はこの同級生が苦手だった。
「フーン。 相変わらず………」
石黒が足先まで目をやったあとにまた透子の顔に戻り、ふと隣の静を見あげる。
「うわ、イケメン連れてるんだ? オレは白井さんの元同級生で…何さん?」
興味深げに石黒が訊く。
「八神。 君はここの?」
「住職の息子かな? でもね、稼ぎ時だっていうのに親父が派手なものは好まなくて。 オレの代になったら盛り返してやるんだけど」
「それは感心なことだな」
そういえば彼の家庭環境も複雑だったっけ。
学生時代は母方の方で住んでたとか。
別居というやつかな。 透子がおぼろげに思い起こす。
「あ! 今休憩時間だし、軽く寄ってかない? オレの嫁も紹介したいし」
「え、いいよ。 この忙しい時期に石黒くんの手を煩わせるわけにはいかないし」
もう結婚してるんだ、などと雑談する前にここを去りたかったのが透子の本音だった。