第16章 大人の遊戯*
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「綺麗な湖ですね! うちの地元ではこんな大きなものは余りないので………あ、向こう岸に鳥がいます」
柵から身を乗り出し、透子が辺りを見渡した。
風も余り無いため湖の水面は穏やかでキラキラと輝いていた。 周りの木々が逆さまになりその周りを縁取っている。
静の話によると、ここの近くは遊戯施設なども無いらしく、ファミリー向けではない場所だそうだ。
湖にはカップルなどがチラホラといてゆったり湖畔で談笑したりボートを楽しんだりしていた。
「湖面が鏡のようだな。 ほらあそこにボート乗り場がある」
たしかにこれは大人の遊びだ。 うむ、と透子が頷く。
「私、漕ぐの得意です」
「ん? 普通こんなものは男がやるものだろう」
「上手な方がやればいいのではないですか」
と、腰に手をあてた静がはあとため息をついた。
「俺は乗り物全般大得意だ。 バイクや馬にも乗れるしジェットスキーも女」
「女性?」
ピクリと透子の眉があがる。
「い、いや。 女性のエスコートも?」
誤魔化すみたいに横を向き口に拳をやる静に何だかムカムカしてきた。
乗り物なのかあれは。
このエロ大王め。
ズカズカと乗り場まで歩いていった透子が素早くチケットを二枚購入する。
「おい透子…」
「────勝負です!」
サングラスをポケットに仕舞った静が指でピッ、とチケットの一枚を抜き、不遜に顎先を上にあげた。
「フ…よかろう」