第15章 届かない天空をのぞむ*
「では透子様。 また目黒で」
「白井さんに静、今年もヨロシクねー!!!」
「わん!」
車に乗り込み、三者三様の挨拶に大きく手を振り透子が彼らを見送る。
「ふう。 ようやく帰ったか」静が戸口で透子に並び、朝の日差しの中で遠ざかっていく車に目を細めた。
「ふふ。 あれみたいですね。 こう結婚式のあと、車の後ろに缶とかつけるやつ」
「ブライダルカーかな。 あれはアメリカの風習だ。 日本では道路事情のせいで出来ない────が、そんなものを見れる日も遠くないかもしれんな」
軽く笑みを浮かべる静と一緒に透子も微笑んだ。
寒い朝ではあるが白銀の光が枝枝の合間をぬって、落ち葉が敷き詰められた地面の上に煌々と明るく降り注いでいる。
頭上に目をそばめ、透子が陽に向かい真っ直ぐに腕を伸ばした。
「見えないだけで、今もあそこに星はあるんですよね」
「うむ。 いつも居るのが解っているだけで充分なのだ。 手に入らないからこそなお焦がれる………天空の星と違いこうやって温め合うこともできるし」
静が後ろから透子に腕を回してきた。