第15章 届かない天空をのぞむ*
三田村が西条を見詰める目は昨日よりも穏やかで、逃げ回る彼に目を細めている。
「きっと今までは私の中でああいう行為と彼が一致しなかったのです………彼が、私にどう触れる人なのかを知っておきたいような………もちろんお互いにですが」
「………そうやって、今よりももっと近くなっていけばいいですね」
「ハニー! 助けてー」などと泣き言を言ってくる西条にクスクスと笑みをこぼし。
「それに、これぐらいの距離がちょうどいいのかもしれませんね」
三田村が彼に向かって手を振った。
「貴様にやる朝食などない。 とっとと帰れ!! ったく、汚れた体を清めなくては!」憤懣やるかたない様子で言い捨てた静がとっととシャワーに向かった。
階下が落ち着いたのを見計らい、透子と三田村がロフトから降りてきた。
体のあちこちをさすりながら西条はブツブツと文句を言っている。
「イテテ…そんな人をばい菌みたいに。 ちょっとしたスキンシップなのにさ。 静って案外と馬鹿力なんだよねえ」
「西条さん大丈夫ですか。 透子様。 あまり長居をするつもりはありませんし私たちはこれで」
彼の背中と膝下に手を差し入れひょいと抱きあげた三田村が透子を振り返った。
「わっ、ちょ。 は、ハニー!?」
「じゃあ私、メアリーさんを車に連れて行きますね!」
透子の背後から二人の会話が聞こえてきた。
「足を少し捻りましたね。 私はお陰様でほぼ完治していますからご心配なく」
「ハニー…君はやっぱり素敵だ」
「ええ、と………円花、と呼んでいただいてもいいです」
「ま、円花ちゃん…っ!」
視界に入れると噴きそうになるので、透子は彼らに背を向けほっこりとした気分でメアリーに朝の挨拶をし首紐を解いてあげた。