第15章 届かない天空をのぞむ*
「まさか。 その前に俺は透子には醒めない。 23年間生きてきてようやく敬意を払える人間に出会えたのだから。 それが唆る女ならば離せるわけがない。 むしろ愛想を尽かされないようにせいぜい精進するかな」
ふむ、と頷いた三田村が今度は透子に顔を向けた。
「透子様もですか?」
じゃがいもを口に頬張っていた透子が話を振られむせそうになる。 自分は率直に静のようには思えない。 彼と同じに尊敬はしているし、外見も好きだが………それはどちらかと言うと後からついてきたような。
しばらくの間を置き、うーんと考えながら透子が言葉を並べる。
「な、何でしょう。 私は静さんを自分のものにしたいというよりも………私と一緒にいる時の、私に接してくれる静さんが好きです。 三田村さんもではないですか?」
「それなら………メアリーは誰よりも、私といる時が楽しそうです。 そんな彼女がとても…ああ。 何となく分かりました」
三田村が西条をちらと見、初めて柔らかに微笑んだ。
「私は西条さんと契約書を交わします」
「えっ!?」
なぜそうなる。
「一年後にき、キスなどを。 数年後かに本格的な接触を? 彼が私を本当に欲しいと思ってくれているのなら、少なくともその間は私といて幸せなはずですよね。 そして互いに更に好かれるよう努力すると思いますから、きっとその後も心配はないかと」
そして腕を曲げて力こぶしを作ってくる三田村だが、少し違うような正論なような。