第15章 届かない天空をのぞむ*
「慣れていないので分かりません。 実は他の怖さもあります。 逆に透子様にお聞きしたいのですが。 そうすれば私のメアリーのように、あの人が私のものになるのでしょうか? ………と、透子様?」
なにこの人可愛い。※二回目
恋に迷う乙女はこうでなくては。 そしてギャップ萌えとはこのこと。
思わず三田村の腕をぎゅっと抱きしめた透子だったが、その時頭上の窓がキイと開いた音が聞こえた。
「そこな天使とやら。 浮生夢の如しと言うだろう。 それはそうと、風邪をひくといけない。 仲睦まじいのは結構だが中に入りなさい。 チーズが煮詰まってしまう」
静がこちらを見下ろし声をかけてきた。
「なぜそこで李白が出てくるんです」
「さあな。 西条は酔いつぶれて寝てるから安心したまえ」ふっと三田村に微笑みかけた静が窓を閉め、顔を見合せた透子たちも立ち上がった。
む、もしやまたこちらの会話を聞かれてたのか。 相変わらず趣味の悪い。 自分たちのことを棚にあげ、呆れたように自分の左手の指輪に目をやる透子だった。
再び暖炉の周りに今度は人数分の肘掛椅子を運び、「料理で余ったものだが。 手土産はそこの馬鹿が平らげたようだから」静が言い、めいめいに注がれたワイングラスで三人が乾杯した。
少し離れた所にあるダイニングテーブルでは西条が突っ伏していびきをかいている。
暖炉の上でくつくつと白く小さな泡を立てている小鍋に、串に刺したバケットを浸し透子が口に運んだ。
「んっ、すごく美味しいです!」