第15章 届かない天空をのぞむ*
「若いうちはねえ。 まさか日本であんなお遊びなんてする気は無いよ。 彼女に関してはいいんだよ。 見た目よりもずっと、本当は細やかで優しく女性らしい。 だってホラ、天使に手を出す気なんて起こらないだろ?」
「凡人ならな。 まあ、俺は違うが……おい。 皿に置いたチーズフォンデュ用の食材をガツガツ食うんじゃない」
「なのに偶然手が触れただけでも過剰に拒否反応を示される。 これじゃあとても結婚生活なんて無理なのかななんて」
「………三田村の過去を知っているのなら理解出来るだろう」
「もちろんさ。 だから一切手は出さないと本人にも言ってる」
「それは口約束だからだ。 書面の上で契約したまえよ。 貴様のようなヘラヘラした男では全く説得力がない」
「書面? 例えば何さ」
「『乙が身体の接触を甲に強要した場合は乙の財産の半分の譲渡を以て離縁とする』などいくらでもあるだろう」
「なるほど」
「だが俺は勧めんがな」
「ン………? 何で」
「貴様のためだ。 そこまでしても三田村が欲しいんだろう」
「………」
「最初から傾いた天秤に幸福な将来など無い。 フン、これで借りは返したからな」
「静ちゃーん。 オレには諦めるべきとしか聞こえないんだけどー」
「気安く呼ぶな俺に触るな。 はっ…貴様、この役立たずが! 持ってきたと言っていたワインをもうこんなに。 そんなことよりも俺の姫は」
「あれ、オレの天使も………てか、眠」