第15章 届かない天空をのぞむ*
「三田村さんはこういうの得意じゃないですか?」
「え?」不審な顔を向けてくる三田村だったが、姿勢を低くした透子がロッジの窓辺へと近付いていく。
「透子様、何を?」
「………だ」「まさか」あまり窓から頭を出さないようにして耳をそばだてると、中の二人の微かな声が聴こえてきた。
身振りで三田村を呼んだ透子に彼女も寄って来、すると三田村が胸元からゴソゴソと小さな聴診器のようなものを取り出してきた。
「盗聴ならば」
「それは………?」
「小型の拡声器です。 こう、窓に当てて」
さすがプロだ。 準備がいい。
ピタと窓にそれを押し当て、反対側にあるやや広い口のような形状のものからはハッキリと二人の会話が聞こえてきた。
「────まあね。 君らの邪魔をしてるのは百も承知なんだよ」
「ほう? では俺に刺されても文句は言えないと? 今宵の愉しみはおろか、貴様らとあの獣のせいで明日に透子の浴衣姿を堪能しようとした俺の計画が台無しだ」
トントンと何かを切っている音が聞こえる。
おそらくずっと文句を言い続けていたらしい静に頓着せず西条が独りごちていた。
「いやさあ。 さっきも言ったけど俺、円花ちゃんに求婚したわけ。 海軍を経て元工作員でしょ。 防衛大卒の才女で船でもヘリでも操縦出来るしさ、加えてあのルックスだし」
「………貴様の惚気など聞く気はないが。 趣味が変わったのか?」