第15章 届かない天空をのぞむ*
それをいいことに西条がズカズカ敷居を跨いでくる。
「ハハハ、またまた! 固い事は抜きでさ。
ん、暖炉か、懐かしいね。 いい所じゃないか。 祝い事は皆でパーッとやろう!」
「………」
いつかコロス、みたいな顔で西条を睨んでる静は置いておいて。
透子は何となく元気のなさげな三田村の様子が気になった。
「確かに…透子をもらった借りはあるからな。 軽食ぐらいは用意してやろう。 ただし獣は外に繋いでおけ」
ブツブツ言いながら静がキッチンへ向かう。
もっと貸し借り以外に言いようがあるだろうに。
ふうと息を吐く透子に、くい、と自分の浴衣の袖をつかまえた西条が耳打ちしてきた。
「白井さん。 少しだけハニーのフォローを頼めるかな? オレとしては純粋に彼女と旅行を楽しみたかっただけなんだけどな」
「?………はい」
悪いけどお願いね。 ちょっと困った顔で静の後を追っていく西条の後ろ姿を眺め、透子が首を傾げた。
とりあえず透子が外に出、メアリーを木に繋いでいる三田村の姿を見付けて傍に寄っていく。
ここは多少は標高があるらしい。
羽織りを着ていてもコートが欲しくなる寒さだ。
「山の中はやっぱり冷えますね」
自分の体に腕を回した透子は三田村の隣に座ってみた。
「透子様」