第15章 届かない天空をのぞむ*
「グルル────……わん!!」
透子とそれの目が合い、額に皺の寄った険しい顔から一転して、人懐っこそうな表情で白と黒の模様の大きな犬が透子に向かって飛び付いてきた。
「えっ!? わわっ! あ、可愛いですね!」
しゃがんで手を出すと人懐っこそうに頬ずりをしてくる。
でも、ええと────……?
この犬はどこかで見たことが。
そう思っていたら、「透子。 その獣をどこかに避けたまえ」と背後から静が言ってくる。
見るとドア口近くの柱で体を隠し彼の顔だけがちょこんと覗いていた。
「………怖いんですか? 犬」
「相性が悪いだけだ」
ほほう。 アッサリ静の欠点、というか弱点を発見してしまった。
犬猿の仲とはいうが、性欲が猿並みだから? とどうでもいいことを透子が考えていると「メアリー!」と聞き覚えのある声。
「あ、この子やっぱり三田村さんの!」
慌てた様子で追って来るも、まだ本調子ではないようだ。
多少足を庇っている三田村に向かってメアリーが走っていく。
「透子様。 夜分にすみません、お留守なのかと思い引き返そうと」
お座りをしているメアリーを撫でながら、弱りきった顔で断りを入れようとする三田村だった。
その後に駐車場の車から降りた西条が大股で彼女に追い付いてきた。
「やあやあ、先ほどはどうも! 奇遇なんだけど、うちの別荘もここの近くでね。 せっかくだから内々で年賀のパーティでもと思って。 いいワインを持ってきたよ」
「いつから貴様が内々の人間になったんだ? とっととその獣を連れて帰れ!」
ワインボトルをかざし大声で愛想を振りまく西条に静が抗議するも、顔しか見えてない彼にはいつもの威厳が全くない。